パイ生地作り【 きれいな焼き色(きつね色)をつけるコツについて】

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「パイ生地に美味しそうな焼き色をつけたい!」と思ったことはありませんか?

アップルパイを焼いたのに、生地がなかなかこんがりとしたキツネ色にならない…。そんな悩みを抱えたことはありませんか?

焼きたてのパイを見たとき、最初に目を引くのは、パイの表面についた美しい焼き色。やっぱり、見た目は大切ですよね。

ご承知の通り、人の第一印象はたった3秒で決まると言われており、そのうちの90%以上が視覚情報に左右されています。(メラビアンの法則より)これは料理にも当てはまり、特にパイのような焼き菓子では「香ばしい焼き色」=「美味しそう!」という印象に即繋がります。

では、どうすれば美味しそうな焼き色をつけることができるのでしょうか?
実は、卵黄・卵白・生クリーム・牛乳などを生地に塗ることで、パイの仕上がりが大きく変わります。

この記事では、パイ生地に香ばしい焼き色をつけるためのコツを解説!

さらに、焼き色を生み出す「メイラード反応」について説明しています。最後まで読んで、あなたの手作りパイをワンランクアップさせてくださいね 。

メイラード反応とは? こんがり焼き色と香ばしさの秘密

パイのこんがりとした焼き色と香ばしい香り、これは「メイラード反応」と呼ばれる化学反応のおかげです。そしてこのメイラード反応の主役のひとつは「アミノ酸」。アミノ酸はタンパク質をつくる基本成分で、卵や乳製品、小麦粉などのタンパク質が豊富な食品に多く含まれているんです。

この反応は、加熱されるとアミノ酸と糖が結びつき褐色物質(メラノイジン)が生成され、食品の表面がきつね色になり、美味しそうな色と香りがつくのです。

そのため、パイ生地に卵や乳製品を塗るとアミノ酸が増え、より美味しそうな焼き色に仕上がります。見た目が美味しそうに見える秘密はこの小さな成分、アミノ酸の働きによるものなんです。

パイ生地にメイラード反応を起こすための温度設定は超重要

「パイ生地にこんがり焼き色をつけたい!」と思ったら、とにかくオーブンの温度設定に気をつけましょう。

メイラード反応が活発になるのは140〜160℃以上。そしてパイ生地をサクサクに焼き上げるには200℃前後の高温がベストです。そして、卵黄や牛乳を表面に塗ると、さらに反応が進むため、美しい焼き色に仕上げることができます。

適切な温度管理をすることで、見た目も香ばしさもパーフェクトなパイをやくことってできるんです。

メイラード反応が始まる準備段階で起きることとは

オーブンに入れた直後、パイ生地では何が起こっているのでしょうか?

まず、水の沸点の温度は100℃ですが、メイラード反応は140℃前後で発生し始めます。しかし食品に水分が含まれている間は、温度はこれ以上に上がらないため、反応って起きないんです。

そう、メイラード反応を起こすために邪魔なものは水分なので、メイラード反応が起こる準備段階では、食材の表面にある水分を飛ばさせる必要があります。

以下、温度が上昇する過程でおこる変化を大まかに説明します。

Information

140℃
バラバラになっていたアミノ酸と糖が結合し反応が始まる。ここから褐色の分子、風味の分子が形成し始める。

150℃
反応が活発になる。風味は140℃の2倍に増加され、さらに多くの香り分子が生み出される。

160℃
ますます反応が活発になり、風味の反応はピークに達する。

180℃
焦げ始める。香は失われ苦い風味が出始め、分子も苦い成分を作りだす。This is a danger alert.

  こんな風に、温度の変化で何が発生するかを理解しておくとよいですよ。

パイ生地にメイラード反応をおこさせるオーブンの温度とは

手作りパイを作る時の一般的な焼き方は、生地やフィリングの種類に違いはあるものの、こんがりとした狐色に焼き上げたい場合は以下を参考にしてください。

Information

オーブンを200℃~220℃(425℉)に予熱しておく。
180℃以下はNG : 焼き色がつきにくく、生地がベチャッとしがち。
          

パーチメントを敷いた天板にパイ皿を置き、一番下のオープンラックに置く。


パイを10分~20分焼いた後、温度を170℃~180℃(350℉)に下げ、さらに中身が泡立つまで約40分~45分焼く。

生地の端が早く焼けてしまうため、パイシールドやアルミホイルを被せパイ生地の焦げを防ぐ。

冷凍のパイシートを使う場合は200度のオーブンで10分焼き、 その後160度で約10分焼くようにする。

焼き色を変える! 塗る材料による仕上がりの違い

パイ生地の焼き色は、焼く前に何を塗るかで大きく変わります。そのため、どんな仕上がりにしたいかで、塗る材料を選ぶとよいです。

焼き色をしっかりつけたいなら卵黄系、控えめにしたいなら牛乳や生クリームがおすすめ! 

仕上がりのイメージに合わせて、塗るものを選んでみてください。メイラード反応をうまく利用すると、見た目の印象はある程度コントロールが可能になりますよ。

黄身 1個
水  小さじ


黄身 1個
生クリーム 大さじ3
黄身  1個分
牛乳  小さじ1
塩 ひとつまみ


白身 1個分
生クリーム 大さじ3

まとめ|メイラード反応を活かして美味しい焼き色を!

パイ生地の香ばしい焼き色は、単なる見た目の問題ではなく、美味しさにも直結する大切な要素。その鍵を握るのがメイラード反応でした!

  • メイラード反応は140〜160℃以上で活発に進行
  •  パイをサクサク&美味しそうに焼くなら200〜220℃が理想
  •  塗る材料(卵黄・牛乳・バターなど)で焼き色の仕上がりが変わる
  •  オーブンの温度管理&仕上げの工夫で、理想の焼き色が実現

「見た目から美味しいパイ」を作るために、オーブンの温度や仕上げのひと工夫を意識してみましょう。メイラード反応を味方につけて、パーフェクトな焼き色のアップルパイを楽しんでくださいね!

あとがき|メイラード反応の雑学

実は、このメイラード反応って加熱だけではなく、長時間の保存や熟成でも進行するんです。たとえば、熟成された肉や発酵食品にも、その痕跡が見られます。

それらは日本酒、お味噌、お醤油の色合いも、メイラード反応によるもの。これらの食品が時間とともに色が濃くなるのは、反応が進むためなんです。

さらに、メイラード反応をうまくコントロールすると、白味噌のように、色が白く仕上がることもあります。このようにこのメイラード反応というものは食品の色や風味に大きな影響を与えるんです。

反応の発見者はフランス人研究者だった

メイラード反応を発明したフランスの化学者

こんな面白いメイラード反応を発見したのは、誰かというとルイ・カミーユ・メイラードというフランスの化学者。1912年に初めてこの反応を解明し、食品の焼き色や香りに重要な役割を果たしていることがわかりました。

美味しさを作る仕組みを見つけてくれたメイラードさん、ありがとうございます。